臨床検査医学 教授
臨床検査科 診療科部長
松下 弘道
臨床検査は、問診・身体所見とともに診断や治療効果判定を行う根拠として利用されます。測定方法に応じて、血液や尿など患者さんから採取した検体を測定に用いる検体検査と、患者さん自身から直接データを測定する生理機能検査の大きく2つに分けられます。近年医学研究が進み、各疾患における病態解析が進み新規治療の導入されるに従い、新規の検査項目が臨床検査として取り扱われるようになってまいりました。
臨床検査医学は、これらの臨床検査を取り扱う学問です。日本専門医機構が定める19基本領域の一つに数えられる基本的かつ横断的な分野で、臨床病態の考察とそれに基づく検査検出系の確立を取り扱うほか、実際の業務で重要な検査精度管理や検査システムなどを取り扱います。医療では検査データは狂いなく正確であることが前提となっているため、病態に特徴的な検査項目をできるだけ精確に測定し提供することが臨床検査医学における最終的な目標となります。
私達は、臨床を行う上で有用な検査に関する情報の提供や新たな検査の開発を目指して、日々の研究・教育・診療業務に励んでおります。
当臨床検査医学教室は、(1)学部、大学院、研修医そして臨床検査技師の教育、(2)病態解明の為の基礎研究、先端的検査の研究開発を行っています。実学を重視し、病院組織の一部である中央臨床検査部と一体となり臨床に役立つ医学研究、医学教育を実践しております。
教育•研究については病院組織としての「中央臨床検査部」として昭和45年からLaboratory Diagnosisとして学生教育を行っておりましたが平成15年より大学院医学研究科博士課程に「臨床検査医学」が設立され臨床検査医学の専攻により学位取得が可能となりました。平成21年に医学部に臨床検査医学教室が設置され、それまで病院中央臨床検査部に所属していた専任医師は、医学部教員を兼務することになりました。
医学部学生の系統講義、臨床実習、初期臨床研修医の指導に力を入れています。疾患の病態生理を正しく理解し、診断することができるようになるために、特に症例を大切にし、データを読む実践学習を通じて臨床検査を総合的に捉え、問題解決能力の高い医師を育てることを目標としています。また後期研修医教育として臨床検査専門医資格取得カリキュラムに従った研修プログラムが用意されています。さらに臨床検査技師の卒後教育にも力を入れています。
基礎医学と臨床医学の融合という塾医学部の基本理念に基づき、基礎研究の成果を患者に還元することを主要な研究目標としております。新しい検査法が実用化されるまでの多くのステップ、すなわち一次研究と系統的レビュー、治療意思決定における有用性、検査方法論の確立、検査の安全性、倫理性と経済性の評価、保険医療への適応、そして病院間の検査標準化、データ共有システム、などが研究対象となります。具体的には新しい検査項目の開発、新しい検査項目の選定、臨床的有用性を確認するための研究、臨床検査を含む臨床各科との共同研究、検査データの作成や専門的知識による研究支援を行っています。
それぞれの専門を有する教員が関連する基礎医学教室、臨床医学教室などと連携をとり研究に励んでおります。その研究領域は極めて幅広いものになっています。
報告書作成などの検査業務、精度管理業務、データ解釈、臨床医とのインターフェイス、専門的知識を通しての医学的コンサルテーション、新規検査の導入検証などが臨床検査医としての主な診療業務です。教員はそれぞれの担当部署の業務担当医師として検査技師とともに日常検査にあたっています。