HbA1cは糖尿病の診断ならびに治療モニタリングに必須の項目です。このため、日本国内ではHbA1c値を正確・精確に維持・管理、測定法の標準化に取り組むことで施設間差の是正に努めてきた背景があります。一方で海外に目を向けると、HbA1c値には日本でも用いられているNGSP値(NGSP%)の他に、主にヨーロッパで用いられているIFCC値 (mmol/mol)が存在します。糖尿病に関する様々な研究を進める上では、これらの値の関係を正確に把握することが重要です。そこでIFCC(International Federation of Clinical Chemistry and Laboratory Medicine)では、IFCC HbA1c Network Laboratoryという国際的なネットワークを構築し、同一のサンプルを世界中の各ラボ(全17施設(2023年現在))の精密測定用装置(HPLC-CE, LC-MS, LCなど)を用いてHbA1c値(NGSP値, IFCC値)を測定しています。これらの測定値から、NGSP値とIFCC値の換算式を導き出し、単位の異なるデータを有効活用できるように努めています。一部の国際誌では、HbA1c値はNGSP値とIFCC値を併記することが求められており、その際にこの換算式が使用されます。
当院では、このネットワークの一員として世界規模のサーベイに参加しています。当院ではIFCC法としてLC-MSによる測定を実施しています。また、NGSP値の換算式を提供するために、HPLCを用いたKO500法により求めたNGSP値も報告しています。
なお、この国際サーベイの詳細情報はウェブで閲覧することも可能です。換算式に関する情報も掲載されていますのでご活用ください。https://information.ifcchba1c.org/
主に都内の登録衛生検査所を対象とした「東京都衛生検査所精度管理調査」は昭和57年度から毎年行われており、当微生物検査室はリファレンスラボとして参加しております。目的は東京都健康安全研究センターで作製された検体試料(菌の性状)の安定性をモニターすることです。
一般的な外部精度管理調査と異なり、報告されるべき菌の性状は日常検査に使用している機器・試薬による調査のみにとどまらず、その同定・薬剤感受性試験結果を多方面から調査して報告しております。